ことの顛末(1)

母の病気がどうやら躁うつ病らしいと気付いてから(といっても、あまり「うつ」の方は思い当たらないのだけれど)私はなるべく母からの電話やメールを無視するようにした。どんな反応をしようが興奮させるだけなのだから、相手をしても意味がない。

 

ある日、私が外で買い物中に携帯が鳴った。時間的にたぶん夫からだろうとつい相手を確かめずに出てしまうと、こちらが何度も「もしもし?」と言っても返事がない。私も苛立って「もしもし!」と怒鳴りつけると「聴いてる!」という母の声。しまったと思った。

 

母は「聴いてる!あんたの声は覚えてるよ!」と相変わらず一方的な言い分をまくしたてていたけれど、私はこれ以上の話を阻止するために「今外出先で忙しいの!じゃあね!」とこちらも一方的に電話を切った。

 

母からその夜にまたキチガイメールが届いた。内容は「今夜はお花見🌸祇園で~🌸昔は文学少女やってんよ🌸💊がまともにしてくださいます」というもの。もちろん、母は祇園になど居ない。この時点では精神科にも行っていないので「💊」が何の薬を意味するのかもわからない。

 

その後も「しあわせ~」「結婚してここに来てよかった~」などという内容のメールが何度も届いた。私はさすがにもううんざりしてきて、携帯もメールも母からのものはすべて着信拒否に設定した。

 

事件が起きたのはどうやらその夜だった。翌日、伯母(母の義姉)から連絡があり「○○ちゃん(←母の名前)から深夜の1時頃電話があって、それから意味不明なことを一人でまくしたてて、なんか近所の人に暴行したみたいな話もしてたんよ。ちょっとおかしいと思う。」とのこと。

 

伯母にはひたすら謝って、たぶん躁うつ病ではないかという話をした。そして「心苦しいとは思うのですが、母からの電話は無視してください」と伝えておいた。幸い、伯母の娘は総合病院の看護婦長をしているので、そう言えば後は彼女が補足説明してくれるだろうと思う。

 

問題は「暴力をふるった」の方だ。父もさすがにこれ以上放置しておけず、母を病院に連れていくという連絡が入る。

 

母の主治医がいる乳腺外科にまず連絡をして、それから乳癌の影響が他の個所に及んでいるかどうかをまずチェックしてもらう。そして体の方は全く異常無しという結果に。

 

次に「プレカウンセリング」を予約してもらう。これはまずカウンセラーに「どれくらいの精神状態の不良なのか、そしてどこで治療するのが最適なのか」を見極めるためのものらしい。まあ私たちは素人判断で「躁うつ病」と思っているけれど、プロの医者がチェックするとまた違う病気の可能性もあるのかもしれない。

 

しかし「近所の人に暴力をふるった」という話を父から詳しく聞くと、どうやら母は「近所の人が電波を使って、自分の娘や息子の悪口を広めている」と思い込み、近所の人の家までわざわざ出向き、その人の首を絞めようとしたそうだ。

 

「電波」って・・・・「キチガイあるあるワード1位」のアレかあ~と脱力してしまう。これでカウンセリングで「精神疾患はありませんよ」と言われたらたまったもんじゃない。何がなんでも精神科で受診させないと!と強く思った。